2023年5月 ホームぺージをリニューアル致しました。

市民健康講座

第346回市民健康講座 (2022年9月21日)

テーマハート(心臓)にまつわるお話
講 師国立病院機構 大阪医療センター 循環器内科 医長
 井上 耕一先生
開催日時2022年(R4年)9月21日

 心臓病の中で、脈が乱れる病気のことを不整脈といいます。不整脈の中には治療を必要とするものとしないものがあります。心房細動は治療を必要とする不整脈の中で最も患者さんの数が多く、 大阪府だけで10万人以上の方が罹患していると考えられます。心臓の一部である心房がけいれんをしたような状態になり、脈がバラバラになってしまうために、動悸を感じたり、脳梗塞が増えたり、心不全になりやすくなったりします。また、最近では認知症になりやすいこともわかってきました。 心房細動の厄介なところは、半分くらいの患者さんには症状がなく、知らない間にこの病気になってしまっていることがあることです。症状がないからと言って、心配がないわけではありません。 症状がない心房細動患者の方が、症状がある患者よりも予後が悪いというデータもあります。「知らない間に心房細動になり、脳梗塞や心不全になって初めて気が付く、、。」というケースをしばしば目に します。このようにならないためにも、心房細動になっていないか、チェックすることが重要です。一番手軽なのは自分で脈を調べる検脈です。最近では、携帯型心電計も売られていますし、アップルウオッチでは心電図が記録できるうえにアイフォンのアプリがある程度の自動診断をしてくれます。 心房細動は高齢者で特に多いので、脳梗塞や心不全を予防するためにも自分で不整脈が分かるようになりたいところです。 心房細動が見つかった場合は、治療が必要となります。心房細動は高齢者に多いですが、高血圧、糖尿病、心不全、肥満がある方が特になりやすいので、これらの病気の治療や生活習慣の改善を行います。同時に、脳梗塞予防のために、抗凝固薬と言われる「血をサラサラにする薬」も服用します。抗凝固薬の副作用に出血がありますが、出血しやすい方には経皮的左心耳閉鎖術というカテーテル 治療で抗凝固療法をやめることもできる場合があります。また、脈が速くなりすぎることが多いので心不全予防のためにも脈を遅くする薬を内服します。逆に脈が遅くなってしんどくなってしまう場合もありますが、そのような場合はペースメーカーを植え込む治療をしなくてはなりません。抗不整脈薬というお薬でこれらの心房細動を抑え込むことも可能なことがありますが、重篤な副作用もあるので慎重に行わなくてはなりません。これらの治療は心房細動とうまく付き合うための治療です。治癒させる治療としてカテーテルアブレーションがあります。初期の心房細動では効果が高いですが、 発症後長く経過した心房細動では効果が低いので、早めに治療を受けることが必要です。 心房細動は、早期発見して早期治療をすることが重要です。病気の正しい知識を持って、正しい 対応をするようにしましょう。

  • 第346回市民健康講座 (2022年9月21日)_1