2023年5月 ホームぺージをリニューアル致しました。

市民健康講座

第339回市民健康講座 (2021年7月14日)

テーマCOPD ( Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患 )と循環器疾患
講 師大阪府結核予防会 大阪複十字病院
 診療部長  奥田 みゆき 先生
開催日時2021年(R3年)7月14日

 皆さんは、COPD(シーオーピーディ)という病気をご存じでしょうか? 主にタバコが原因となる 肺の病気で、高血圧や糖尿病と同じで生活習慣病のひとつです。 「21世紀における国民健康づくり運動:健康日本21」でも主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の1項目として取り上げられています。1)しかし、高血圧や脂質異常症、糖尿病では死亡率の低下や目標とする数値も挙げられていますが、COPDの達成目標は「病気を認知してもらうこと」です。それだけ、一般の方には馴染みのない疾患ですが、2021年現在、世界の死亡原因第3位の疾患で、500万人の日本人が罹患しているといわれています。2) COPDはタバコが原因で肺が破壊されて気管支が狭くなって、息切れや咳嗽を起こす病気です。生理学的には閉塞性肺疾患の一つで、確定診断には呼吸機能検査が必要です。具体的には努力性肺活量の70%以上を1秒間に吐き出せないことが診断の必須項目です。みなさんは、「息切れ」を自覚したことはありませんか?そして、それを「年のせい」を考えていませんか?過去にタバコを吸った経験があるなら、現在禁煙していても、その「息切れ」はタバコのせいかもしれません。以前、COPDは治らない疾患の一つでしたが、今では自覚症状を改善させる治療法も確立されてきています。「息切れ」が原因で、身体活動が低下して食事をとることも大変になって栄養障害・筋力低下から疾病の一歩手前の「フレイル」3)になってしまうかもしれません。また、実はタバコの煙は血液中の悪玉サイトカイン( 生理活性物質 )や伝令遺伝子 ( mRNA ) に運ばれて様々な臓器で疾病を併発します。循環器疾患は、その最たるもので虚血性心疾患、心不全、高血圧、肺高血圧などを合併し、COPD患者さんの約27%は循環器疾患が原因で死亡されるとも報告されています。4)逆に循環器疾患のある患者さんにCOPDが併存しても、その患者さんの予後は悪化します。例えば、COPDの合併は未破裂動脈瘤の術後肺合併症のリスクを9.7倍にしました。5) 喫煙経験のある方が息切れを訴えて来院された場合は、COPD・循環器疾患のどちらか、または両方を念頭に置いて診療するようにしています。 また、どちらの疾患も身体活動性の低下・社会的フレイルで健康寿命が短くなります。毎日維持できる小さなこと、マラソンやゴルフなどの運動ではなくて園芸などの趣味やお買い物、お茶を入れるなどのことで身体活動性を上げるようにしてくださいね。

参考文献
  1. 健康日本21目標値一覧 厚生労働省
  2. FukuchiY,NishimuraM,IchinoseM,etal. COPDin Japan: the Nippon COPD Epidemiology Study. Respirology2004;9:458―465.
  3. Buchner DM, Wagner EH. Preventing frail health. Clin Geriatr Med. 1992;8:1-17.
  4. Rabe, K.F .:Treating COPD─the TORCH trial, P values, and the Dodo, N Engl J Med, 356:851~854, 2007
  5. 田尻 守拡 他.未破裂大動脈瘤患者におけるCOPD併存率とCOPDが術後肺合併症に与える影響.日本呼吸ケア・ リハビリテーション学会誌、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2013年 23 巻 3 号 293-299     
  • 第339回市民健康講座 (2021年7月14日)_1