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市民健康講座

第345回市民健康講座 (2022年7月22日)

テーマハート(心臓)にまつわるお話
講 師医療法人 竹谷クリニック 院長
 竹谷 哲先生
開催日時2022年(R4年)7月22日

 心不全は、加齢に伴い増える代表的な疾患の一つです。心不全は、血液を全身に送るという心臓のポンプ機能が低下し、心臓から血液が十分に送り出せなくなった状態のことをいいます。全身への 血液量が不足することで、体に水が溜まり、息切れやむくみなどの様々な症状が起こります。病名よりは、からだの状態を示す言葉です。心不全患者は世界で6,000万人を超えると言われています。 日本の人口は減少傾向ですが、心不全の入院患者数が年々増加しています。心不全患者の多くは高齢者で、高齢化の進行により、心不全患者数の増加が懸念されているのです。心不全患者の将来推計では、日本の心不全患者数は2020年に約120万人、毎年35万人の方が新たに心不全を発症すると言われており、2035年にはピークをむかえ132万人となると推測されています。なんと、国民の100人に1人が心不全患者になると言われています。(Okura Y, et al. Circ J. 2008; 72: 489-491.)(国立社会保障・人口問題研究所. 日本の将来推計人口 (平成29年推計))さらに日本の心不全コホート研究であるATTEND、WET-HF、REALITY-AHFの統合解析では、心不全患者は退院後、約4分の1が1年以内に再入院することが示されています。(Shiraishi Y, et al. J Am Heart Assoc. 2018; 7: e008687.)心不全って一回入院して、良くなって退院してもまた入院しやすいのです。 この繰り返しの入院は患者・家族の心身、経済的な負担を増加させます。広島県呉市の国民健康保険・後期高齢者の医療費データでは、心不全患者の医療費は、外来医療費全体の約1/7、入院医療費全体の約1/4を占めると報告されています。(医療・介護費分析から見えてくる医療費の使われ方 (経済・財政一体改革推進委員会第9回社会保障ワーキング・グループ提出資料), 2016.) 実は医療提供する側も大変なことになっています。循環器の領域では、高度な医療を提供するために必要な知識と技術を有する専門医のみならず、広く循環器診療を担うかかりつけ医師が不足していると言われています。(厚生労働省. 第1回循環器病対策推進協議会, 資料4-2:日本循環器学会提出資料. 2020)また、かかりつけ医にとっても心不全の患者さんを診療する事は負担が大きく、対応に苦慮する場面が多いです。 つまり、心不全の再入院をいかに防ぐかは非常に重要な課題なのです。高齢心不全患者が再入院する契機の半数近くは、怠薬や飲水過多などの自己管理不足と言われています。そのため、再入院を防ぐための自己管理には、セルフケアメンテナンスとセルフケアマネージメントが重要です。心不全は治らない病気であり、心臓を長持ちさせるには、生涯にわたり心不全治療を継続するする必要があります。しかし、心不全の治療や自己管理をこれまでの生活の中に上手く組み込むことができれば、 これまでと変わらない生活を送ることができます。是非とも心不全を悪化させないための自己管理をおこなってください。

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