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市民健康講座

第287回市民健康講座 (H23年7月4日)

テーマ冠動脈疾患の診断と治療について
講 師医療法人朗源会 大隈病院 院長 立石 順 先生
開催日時2011年(H23年)7月4日

冠動脈とは?
心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を果たしている。このポンプである心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできている。心筋が休むことなく収縮と弛緩を繰り返し、常に心臓が全身に血液を送っているので、我々は生命を維持できている。常に収縮と弛緩を繰り返している心筋は多くの血液を必要としている。心筋に血液を送る管(動脈)を冠動脈と呼ぶ。冠動脈は、心臓の表面に冠(カンムリ)のように走行している。

冠動脈疾患とは?
この冠動脈に動脈硬化や痙攣(れん縮)により狭窄や閉塞が生じ、心筋に充分な血液が供給されなくなる病f??を冠動脈疾患と呼ぶ。冠動脈疾患には多くの疾患が含まれる。以下にその代表的疾患をいくつか記す。
冠れん縮性狭心症
冠動脈は常にある程度の収縮と弛緩を生じている。しかし冠動脈に痙攣が生じ、血流に障害を生じるような強い収縮が起こることがある。この冠動脈の痙攣は、冠れん縮と呼ばれる。冠れん縮が生じると胸痛を自覚する。これが、冠れん縮性狭心症である。冠れん縮性狭心症は、発作が生じていないとき(れん縮がおこっていないとき)には、種々の検査を行なっても診断がむつかしい。そのため、
この疾患の診断のためには、れん縮が生じた時に心電図を記録することが重要である。冠れん縮は、冠動脈の造影検査で冠れん縮を誘発し確定される。治療は、れん縮をおさえる薬剤の内服によって行われる。
労作性狭心症
狭心症の代表的疾患である。冠動脈に動脈硬化が生じると冠動脈壁に粥腫が生じる。この粥腫により冠動脈に狭窄が生じると、心筋に多くの血液が必要な場合(運動などで心臓の脈拍数が増加したり血圧が上昇する時)に十分な血液が流なくなる。心筋に必要な血液が供給されなければ、心筋が虚血となり胸痛が生じる。このような狭心症を労作性狭心症と呼ぶ。この疾患の診断のためには、運動負荷試験や冠動脈 CT Scan、冠動脈造影など検査が必要である。冠動脈狭窄と心筋虚血の存在により診断される。この疾患は、動脈硬化を促進させる喫煙、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、メタボリック症候群などを改善すると共に、狭窄した冠動脈を拡げる処置(冠動脈インターベンションやバイパス手術)が必要になる。最近では、冠動脈インターベンションのなかでも冠動脈ステント特に薬物溶出性ステントを使った治療が多く行われている。
急性冠症候群
冠動脈の粥腫の表面の膜が破れるか傷つくと、そこに血栓ができる。この血栓により冠動脈が詰まると急性心筋梗塞となる。急性心筋梗塞は、致死的な不整脈や心不全で急に多くの方が亡くなる(虚血性心臓性突然死)恐ろしい疾患である。速やかな診断と再還流療法(詰まった冠動脈にもう一度血液を流す治療法で冠動脈インターベンションなど)が必要である。
また、冠動脈内の血栓により冠動脈が詰まらないまでも高度に狭くなると、急速に狭心症の発作が起こるようになる。このような状態を、不安定狭心症と呼ぶ。不安定狭心症は心筋梗塞に移行する可能性があり、適切な診断と治療が必要である。