テーマ | 心臓の病気と運動 運動を味方につけるために必要なこと |
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講 師 | 大阪大学医学部附属病院 医療技術部リハビリ部門 主任理学療法士 鎌田 理之 先生 |
開催日時 | 2016年(H28年)11月2日 |
心臓の病気の方にとって運動を取り入れた生活はとても大切です。そこで今回は、自分の心臓にとって適切な運動を正しく管理するために必要な知識や工夫について、理学療法士の観点からお話し致しました。
1.運動とは:「運動」と聞くとすぐに、激しい運動やスポーツをイメージされるかもしれませんが、そうではありません。スポーツだけではなく、家事や通勤などの生活動作や座位・立位姿勢の保持も、広い意味で「運動」になります。これらスポーツや生活動作を併せて身体活動と言います。
2.心臓の病気と運動の関係:身体活動は日常生活において過度になりすぎると過労を招き、心臓の病気の症状を悪くしてしまうかもしれません。一方で、病気だからと言って安静にしてばかりいると、脚の力が落ちるなどして体が衰えてしまいます。したがって、身体活動が過労へも安静へも偏らずに生活を送るために、自分の心臓にとっての身体活動の強さや量に対するバランス感覚を、適切に身に着けることが重要になります。
3.身体活動を比較する:代謝当量(メッツ: METs)は身体活動の強さを示す指標のひとつであり、この指標を用いて各々の身体活動の強さを比較できます(表)。このような比較によって‘今’している身体活動がどの程度の強さに当たるかを把握できるため、身体活動に対するバランス感覚を磨く助けとなります。
4.運動メニュー(持久性運動について)
1)運動の強さ:心臓の病気の方では一般的に、歩行などの運動の強さは「ややきつい」以下と自覚される程度で、話しかけられても楽に会話できる程度が良いとされています。初めは無理をせず「楽」に感じる程度から開始し、数週間かけて体を慣らしていくのが良いでしょう。運動中に息苦しさ以外にも胸の痛みや動悸、手足の冷たさや冷や汗、めまいなどを自覚する場合は決して無理をせず運動を中止しましょう。主治医に相談の上、症状の出た運動よりも軽い強さ、少ない量の身体活動から再開するようにしましょう。
2)運動時間・頻度:歩行であれば運動の時間や頻度を、一日の歩数として目標を管理することもできます。自分の脚の衰えを防ぐためには4,000歩以上/日歩くと良いでしょう。また、冠動脈病変に対しては、6,500-8,500歩/日の身体活動量が必要とされています。まずは自分の一日の歩数を知ってみて、その上で無理のない範囲でプラス1,000歩を目指しましょう。