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看護セミナー

平成29年5月20日(土)看護セミナー

テーマ「認知症合併心疾患患者の支援」
担 当近畿大学医学部 循環器内科   山本 裕美 先生

 2017年5月20日に大阪堺市のパンジョホールにて73名の参加者を迎え看護セミナーを開催致しました。今回のセミナーには約100名強の参加希望を頂いたにもかかわらず、会場収容人数の関係で30名以上の方をお断りしなければならなかった事に対し、この場をお借りしてお詫び申し上げたいと存じます。 今回のセミナーは、年々増え続ける高齢心疾患患者、特に認知症合併患者のケアに焦点をおき、「認知症合併心疾患患者の支援」をテーマと致しました。当院では昨年から、高齢者・認知症患者に対する取り組みとして高齢者・認知症ケアサポートチームが始動しており、まずはメンバーであるリハビリテーション科の花田一志先生および認知症看護認定看護師の中尾有花看護師にご講演いただきました。花田先生からは「高齢者・認知症ケアサポートチームの意義と当院での活動」と題して、認知症の診断や治療についての現状、また入院中の認知症患者が目的の治療を完遂できるよう、個々の患者に対し、医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士などの多職種がチームとなり議論しつつそれぞれの観点から介入しているという具体的な活動内容についてお話いただきました。  中尾看護師からは「認知症高齢者を理解するケアの視点」と題して、日本の高齢化の現状、認知症者のアセスメント、循環器疾患のある認知症者のケア、これらの患者に対する急性期病院と地域との連携についてお話いただきました。中尾看護師に対しては会場からも多数の質問があり、認知症患者のケアへの関心の高さを実感したと同時に、両講演を聴講し、我々循環器内科医の認知症合併心疾患患者への対応にも改善すべき点があることに気付かされました。次に、「高齢者における 薬剤コンプライアンス~循環器治療薬・抗血栓療法の問題点」と題し、近畿大学医学部循環器内科 安岡良文先生にご講演いただきました。近畿大学医学部付属病院の循環器診療に携わる看護師を 対象に行ったアンケート結果を分析した結果、ここ数年で急増した新規抗凝固薬に対する看護師の認知が不十分であること、また抗血栓薬内服患者の転倒や服薬間違いに遭遇する機会も多いことが紹介され、高齢者や認知症患者に多く認められる転倒や誤服薬のリスクについての考え方、対応についてお話がありました。最後に、「認知症合併心疾患患者の暮らしを支える地域連携 ~多職種でつなぐ病院と地域~」と題して、近畿大学医学部付属病院から心不全認定看護師であり病棟看護師の加藤看護師、退院支援担当の若松看護師、地域連携パス作成担当の岩瀬看護師、地域医療の立場として富田林病院地域連携室の六波羅看護師、和田ケアマネージャーに参加いただき、地域との 連携に苦慮した、多くの併存疾患を持つ認知症合併心不全症例についてそれぞれの立場から討論が行われました。前半で講演いただいた講師の方々、会場参加者の方々からも意見をいただきながら議論が進み、疾患や環境に対する配慮だけでは済まされない認知症患者の地域連携の難しさが改めて認識されました。認知症患者の増加に伴い厚生労働省が推奨している認知症連携パスの存在も紹介されましたが、現在のところ運用が成功しているという報告は少ないとのことで、現時点では個々の症例に応じた詳細な情報の共有で地域と連携していくしかない印象でしたが、今後の課題克服が期待されるところです。 最後になりましたが、今回のセミナー開催にあたり、講師の方々を始めご協力頂きました全ての方々に心より御礼を申し上げ、ご報告とさせて頂きます。