テーマ | 『循環器疾患とオーラルフレイル』 |
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担 当 | 大阪医科薬科大学 循環器内科 教授 星賀 正明 |
開催日時 | 2025年3月8日(土)13時30分~15時30分 |
(公社)大阪ハートクラブ看護セミナーを、2025年3月8日(土)にWebセミナーとして開催しました。テーマを「循環器疾患とオーラルフレイル」とし、30名の参加をいただきました。
第一部では、まず大阪医科薬科大学循環器内科講師の坂根和志先生から、循環器と口腔領域の関連について基調講演がありました。この「心-口腔関連」について、歯周病が菌血症(直接作用)を介して感染性心内膜炎を引き起こすことや、慢性炎症(間接作用)を介して動脈硬化や心血管疾患を促進する可能性を示されました。また、歯の数が減るごとに心血管リスクが増加するデータを示し、オーラルフレイルが循環器疾患患者においてありふれた病態であることを強調されました。続いて、「オーラルフレイル予防と“健口“を目指す口腔ケア」というテーマで、同大学口腔外科講師の中島世市郎先生と同大学病院の歯科衛生士である砂川葵様から講演がありました。中島先生は、口腔機能として口腔内を陰圧に保つこと、保湿、そして咀嚼、嚥下などの重要性について詳しく説明されました。また、口腔機能の測定法として、噛む力、舌の力、唾液分泌能などを教えていただきました。砂川様からは、病棟での、特に高齢患者に対するオーラルケアの実際、具体的には口腔内のマッサージや保湿方法、ブラッシングやスポンジブラシを用いた実践を教えていただきました。オーラルフレイルは、老化に伴う様々な口腔の状態の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力低下が重なり、口腔の脆弱性の増加や食べる機能障害を引き起こし、フレイルサイクルに繋がることが示されました。また、味覚の変化として、調味料や香辛料は感じやすいものの、他の食品群の摂取量が低下する傾向を示唆されました。オーラルフレイルはアウトカムに影響を与える重要な要因であり、特に高齢患者が多い循環器領域で診療に取り入れるべき視点であると強調されました。
セミナーの第二部では、いずれも慢性心不全看護認定看護師である同大学病院の兒島理沙看護師と北摂総合病院の三井巳奈子看護師の進行により質疑応答が行われ、日常の看護現場におけるオーラルケアの実際について、活発な討論が行われました。最後に、同大学病院看護部長の中山サツキ様より、閉会の辞が述べられ、セミナーは盛況のうちに幕を閉じました。今回のセミナーを通じて、循環器疾患とオーラルフレイルは密接に関連しており、循環器疾患患者の予後管理において口腔ケアが不可欠であるという認識が深まりました。心血管イベントや心不全管理の一環として、より積極的に口腔ケアを考慮することの重要性を再認識する貴重な機会となりました。関係各位に深謝申し上げます。