テーマ | 「不整脈の治療と看護」 |
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担 当 | 大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学 花谷 彰久 先生 |
開催日時 | 平成23年5月21日(土) |
平成23年5月21日、大阪市立大学医学部4階中講義室にて110名と多数の参加者を迎え看護セミナーを開催いたしました。
今回のセミナーは、“不整脈の治療と看護”のタイトルで、最近広く使用されるようになった植込み型除細動器(ICD)に関する話題を中心に行いました。ICDは、Brugada症候群や重症心不全を背景に生じる致死的不整脈による突然死を予防する非常に有用な治療法です。特に看護師の方々にとっては、ICDに対する正しい知識を持つことだけではなく、ICD植込術の周術期看護や、ICD患者特有の植込後の精神的サポートも要求されます。
そこで今回は、前半に3名の講師の方々から、ICDの適応や作用機序、周術期の看護について、また最近導入が始まったホームモニタリングシステムについて講演していただきました。後半では、神戸大学大学院保健学研究科看護学 領域看護実践開発学分野療養支援学の齊藤奈緒先生よりICDなどデバイスを植込まれた患者さんの看護支援についてご講演いただきました。
まず、大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学講師 高木雅彦先生からは、“ICDを用いた重症不整脈の治療?ホームモニタリングの有用性?”と題して、ICDの適応や不整脈を停止させる作用機序について説明いただき、その後、最近当院でも導入されましたホームモニタリングシステムについて解説いただきました。ホームモニタリングとは、ICD植込み患者さんの自宅ベットサイドに通信端末器を設置し、ICD作動状況などのデータをその通信端末器から、電話回線(有線または無線)を利用して決まった日時に病院にデータが送信されるシステムです。これにより、定期受診時に行っていたデータチェックが診察前に終了しているため、外来診療時間の短縮や診療の効率化につながります。また、あらかじめ設定された注意喚起(アラート)が発生すると、定時送信日以外でもデータが送信されてくるため、早期に対応でき重症化を防げるとのことでした。
次に大阪市立大学医学部附属病院循環器センター看護師 中恵美先生からは、“遠隔モニタリングシステム導入における活動”と題して、システム導入にさいして、医師、看護師、臨床工学士など種々の職種がチームとなってそれぞれの役割を明確にすることや、実際の導入に際して、患者さんがどのように反応したかなどについてお話いただきました。引き続き、同循環器センター看護師 山村麗子先生からは、“デバイス植込み術を受ける患者への看護”と題して、術前の安静度や不整脈モニタリングの重要性や、術後の創部管理、特に血腫を起こしやすい患者の選別とその対応について解説いただきました。
後半では、神戸大学大学院保健学研究科の齊藤奈緒先生から、“デバイス植込み患者への支援体制構築における課題?ICD, CRT-D植込み患者の療養経験にそう看護支援?”と題して、ご講演いただきました。齊藤先生は、心不全など慢性疾患をもつ患者の場合、病気(disease)と共にその人の人生あるいは生活(illness)を一つの繋がった軌跡として捉えることの重要性、また疾病による身体状況の変化(悪化から改善)と心理的状況の変化には時間的乖離があり、それを踏まえた療養経験にそった患者教育、看護支援が重要であることを強調されました。
また、今回のセミナーは、日々の診療現場で遭遇する話題が中心であったため、各セッションでは、フロアーからも、日々疑問に思われていることについて多数質問があり、活発な討論が行われ、活気ある中でセミナーを終えることができました。
最後に、今回のセミナー開催にあたり、ご協力頂きました講師の先生方を始め全ての方々に心より御礼を申し上げ、ご報告とさせて頂きます。