テーマ | 「循環器疾患患者の予防・治療と看護 ~患者をささえるチーム医療~ 」 |
---|---|
担 当 | 近畿大学医学部循環器内科 山本 裕美 先生 |
開催日時 | 平成22年5月8日(土) |
平成22年5月8日、社団法人大阪看護協会(ナーシングアート大阪)内・3階研修室FGにて92名の参加者を迎え看護セミナーを開催いたしました。
今回のセミナーの企画にあたっては、循環器疾患に携わる看護師の皆さんが今知りたいこと、知っておくべきことは何なのかという観点で考えて参りました。周知のごとく、現在循環器疾患(心疾患)は日本人の死因の第2位を占めており、虚血性心疾患及び心不全は増加の一途をたどっています。また心不全リピーター入院は大きな問題となっており、もはや医師側からの治療アプローチだけでは単純に解決できない現状があります。そんな中で、最近のトピックスとして“慢性心不全認定看護師”の誕生があり、この様な認定看護師が必要とされる背景について考えた際に“チーム医療”“トータルケア”というキーワードが浮かび上がってきました。と言うわけで、今回のセミナーは “循環器疾患患者の予防・治療と看護~患者をささえるチーム医療”と題し、前半に慢性心不全認定看護師、虚血性心疾患治療の実情について2名の先生によるご講演をお願いし、後半はシンポジウム形式とし多職種の4名の先生方によるご講演とパネルディスカッションをお願い致しました。
まず“慢性心不全認定看護師の誕生!”と題して、社団法人大阪看護協会会長 豊田百合子先生から、循環器疾患の疫学に始まり日本循環器看護学会発足から慢性心不全認定看護師誕生までの経緯及びその存在意義、また研修施設や募集内容等につき最新の情報を交えご講演いただきました。最後には、南アフリカでのICN(国際看護師協会)大会参加時のスライドもご提示いただき、参加者に“皆、世界に羽ばたいて!”とのエールが送られました。
次に“心血管カテーテル治療の実情-事故対策を含めて-”と題して、近畿大学医学部循環器内科主任教授 宮崎俊一先生から、カテーテル治療の種類、治療メカニズム等の基礎的なところからバルーンやステントの写真及び冠動脈造影の動画を交えて治療の実際、また治療による合併症についてご講演いただきました。カテーテル治療は多職種によるチーム医療で成り立っており事故発生時には単職種だけで検討するのではなく多職種で検討し問題解決することが最善の対策であり重要であるとのメッセージを頂きました。
後半の“心不全患者のトータルケア~病院から地域へ~”と題したシンポジウムでは、まずソーシャルワーカーの立場から近畿大学医学部附属病院事務部 小西直毅先生に、管理栄養士の立場から同病院栄養部 菅野真美先生に、薬剤師の立場から同病院薬剤部 松浦直子先生に、訪問看護師の立場からケア南海株式会社訪問看護ステーション 中山マキ子先生にそれぞれご講演いただきました。その後のパネルディスカッションでは、会場からも議論に参加いただき、普段では直接顔を合わせて議論する機会の少ない他職種の先生方の率直な意見を耳にすることが出来たことは有意義であったのではないかと思います。それらの議論の中で、訪問看護の実情とその重要性を改めて実感しましたが、病院と地域がお互いまだまだ連携不足でありシンクロしていない現実にも気付かされました。心不全リピート入院患者に関しては、患者背景、社会的背景の多様化に伴い、様々な背景に適したサービスの活用とケアが必要とされており、これらを実現するには多職種の関わりが必然となってきています。この様な大きな問題を議論するには少々時間が足りなかったかもしれません。しかしながら、今回のセミナーが、“患者のトータルケア”“チーム医療”という点において、各々がどういった形で参加しシンクロしていくかを考えるきっかけとなり、患者にとって最善でありより質の高い医療の提供という普遍の目標の達成のために少しでも貢献できたなら幸いに思います。
今回のセミナーに関しては、会場の都合により参加人数に定員を設けさせていただきました。しかしながら、予想を上回る大勢の参加希望を頂き、結果として20名以上の参加希望の方をお断りしなければならなかった事に対し、この場をお借りして深くお詫び申し上げたいと存じます。
最後に、今回のセミナー開催にあたり、ご協力頂きました講師の先生方を始め全ての方々に心より御礼を申し上げ、ご報告とさせて頂きます。