テーマ | 心臓病を持ちながら、自分らしく生き抜くために、支えるために |
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講 師 | 大阪府立大学大学院看護学研究科 教授 籏持 知恵子 先生 |
開催日時 | 2018年(H30年)3月19日 |
慢性心不全は心臓のポンプ機能が悪くなり、息切れやむくみなどを生じ、だんだん悪くなり、生命を縮める病気と言われています。2025年には65才以上の高齢者の割合は、30%を超え、それとともに慢性心不全患者も増加しています。国民医療費の疾患別の医療費の約20%は心臓病などの循環器系疾患であり、がんなどの新生物を抜いて第1位であり、不要な医療費を抑え、その人らしく生活できる医療の在り方が求められています。そのような中、住み慣れた地域で自分らしい医療や介護、生活支援を受けられるという地域包括システムの構築の方向で医療、介護の整備がなされてきています。それに伴い個人の医療や介護を受けることに関する意思 決定も重要になってきています。しかし人生の最終段階における医療に関わる意思表示については家族と話し合い、準備している人は少ない状況にあります。
慢性心不全はその病の経過から、悪化と改善を繰り返しながら悪化していく病気ですが、その期間や予後はがんのように予測が十分できない状況にあり、治療に関しても緩和医療と積極的な治療が最後まで併存的に行われるという特徴があります。悪化した際には様々な症状がでてきますが、緩和医療がまだ十分とは言えず、未確立な段階にあります。現在、最終的にどのような生活、治療、療養を望むのか 医療者、患者様、家族で十分に確認、検討されず、自分らしく生きることにつながらない場合もあることが問題となっています。症状を緩和し、健やかに生き生きと生き抜くためには、医療者の受け手、利用者側にも準備が必要となります。
まず、適切な治療を受けること、食事や運動などに関する積極的な自己管理を行うことは 重要ですが、それと同様に重要なことは患者や家族として医療に参加すること、積極的に医療者と話すことも必要となっています。具体的には、受診の際に日ごろの症状や身体に関する気づきや疑問点をメモして、確実に医療者に伝えるようにすることが大切です。また、症状の出現、治療法が変化した時、入院するなどの際には自分の病状が変化している時期ですので、患者様本人のみでなく、家族の方も医療者に十分に身体状況を聴き、その変化を理解し、今後の療養法や生活の仕方を十分に考えることが重要です。そして日頃から心不全が悪化した際には家で療養するのか、入院するのか、最期までどのように治療し、生活したいのかなど患者様本人の意思を確認し、家族で十分に検討しておくことも重要となります。
心臓病を持ちながら最後まで自分らしく生き抜くために自分自身として、家族として何をすべきか、考えるヒントを看護の立場から解説いたしました。