テーマ | 心筋梗塞を防ぐ |
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講 師 | 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門 部門長 安田 聡 先生 |
開催日時 | 2015年(H27年)5月20日 |
年齢とともに血管は傷つき、その機能が低下し、しなやかさも失われてきます。動脈硬化とは、血管の老化ともいえるかもしれません。年齢以上に血管の老化をすすめる因子には、肥満、高血圧、糖尿病(血糖が高い状態)、脂質代謝異常(中性脂肪やコレステロールが多い状態)など、多くの要因が関係しています。これらが複合的に重なって、動脈硬化が促進されるのです。動脈硬化は、肌のシワやシミなどの老化現象と異なり、外からはわかりません。気づかないまま動脈の壁にプラークと呼ばれるコレステロールや脂質などが蓄積した病変組織が進行し、血液の流れが悪くなる結果、ある日、突然、狭心症や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こすのです。 心筋梗塞は、心臓を栄養する血管=冠動脈の血流がほとんど止まって通じなくなり、酸欠と栄養不足から、心筋の一部が壊死(えし)するほど悪化した状態をいいます。心筋梗塞は、突然死の原因にもなります。わが国の心筋梗塞の発症数は、“魚食から肉食”へ急速に食生活の西洋化が進んだことや、人口の高齢化によって増加傾向にあります。1979年から30年間に及ぶ調査では、心筋梗塞の発症数は1979年当時の4倍にも達しています。発症時の年齢は男性が65歳、女性が75歳で10歳の違いがあります。 心筋梗塞の原因は、動脈内にできたプラーク(コレステロールが蓄積してできた動脈硬化病巣)が破綻すると、その破綻部に血栓ができやすくなります。ただ、今の段階ではこのプラークの破綻がどういう場合に、どういったタイミングで起こるかは、まだしっかりとは解明されていません。したがって、生活習慣を改善したり、心筋梗塞に移行する前の予兆に気付くことが最善の対処法であるといえます。今回の市民公開講座では、症状、診断、治療などについて、最新情報を含めて解説しました。