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市民健康講座

第347回市民健康講座 (2022年11月11日)

テーマ腎臓の働きと慢性腎臓病
講 師大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
 猪阪 善隆先生
開催日時2022年(R4年)11月11日

 腎臓の重要な働きは、血液をきれいにして、取り除いた老廃物を尿として排泄することです。腎臓1個には糸球体と尿細管からなるネフロンが100万個あります。糸球体は「ふるい」の働きをしています。このふるいが目詰まりしてしまうと、クレアチニンなどの老廃物が血液中にたまってきます。一方、血液中にはタンパク質や赤血球など大きな物質があり、ふるいの目が大きくなるとこれらが尿にもれてきます。 腎臓が悪くなる指標は、老廃物が血液中にたまる指標であるGFR(糸球体ろ過量)の低下(60mL/min/1.73㎡以下)、ふるいからもれてしまう指標である蛋白尿のいずれか、または両方の異常が3カ月以上続く場合に慢性腎臓病(CKD)と診断されます。 腎臓は体の水分量を一定に保つ、ミネラル(ナトリウム・カリウム等)を調節する、造血ホルモンをつくる、骨を丈夫にするビタミンDを活性化する、血圧を調節するなどの働きがあります。したがって腎臓が悪くなると、水分・塩分や尿毒素、カリウム・リンがたまりやすくなりますし、貧血になりやすい、カルシウムが不足して骨が弱くなるなどの症状が見られます。 最近は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が原因でCKDが悪化し、透析になる人が増えています。糸球体腎炎、遺伝性の多発性嚢胞腎、感染症の慢性腎盂腎炎なども原因になります。さらに、CKDを放置すると脳卒中や心筋梗塞を起こしやすいこともわかってきました。 尿蛋白があると、将来心筋梗塞や脳卒中を起こしやすいので、食事や生活習慣を改善する必要があります。クレアチニンは筋肉で産生される老廃物ですが、腎臓から排泄されるため、腎臓の機能が低下すると、クレアチニンの値が高くなります。クレアチニン値と年齢、性別から推算糸球体濾過量(eGFR)を算出することができます。クレアチニン値が正常範囲であったとしても、腎臓の機能(=eGFR)が必ずしも正常範囲にあるとは限りません。この点がCKDが見逃されやすい原因となっています。 CKDは腎機能の程度によってステージ1~5に分類され、ステージによって治療が異なります。ステージ1は生活習慣病の治療、ステージ2は生活習慣の改善、ステージ3は食事療法や薬物療法が必要です。高血圧を治療すると腎臓の機能低下を遅らせることが明らかになっています。生活習慣の改善や薬物療法によりCKDの進行を遅らせることができます。ぜひ医師や医療スタッフに相談しましょう。

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