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市民健康講座

第289回市民健康講座 (H23年11月)

テーマ動脈硬化の重症度を評価しましょう
講 師国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 教授・保健管理センター所長 寳學 英隆 先生
開催日時2011年(H23年)11月

 心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患は本邦の死亡原因の上位を占めており、また、罹病率も経年的に増加している。脳卒中は寝たきりの原因の第一位であり、また、心筋梗塞とともに突然死の主要原因である。一たび発症すれば、身体的にも社会的にも大きなハンデを背負うこれら動脈硬化性疾患の発症を未然に防ぐためにはどうすれば良いのだろうか。
  一般的に加齢により動脈硬化は進行し、また、高血圧や脂質異常症など動脈硬化危険因子が合併するとその進行は加速される。ただ、これらの進行は個人によってその程度は異なり、実際、10歳代で動脈硬化を認める例もあれば、80歳代でも認めない例もある。個人の動脈硬化の進行は、遺伝的背景、感受性、危険因子の程度や暴露期間などに影響を受けることから、結局、一人一人の動脈硬化の重症度を計測することが必要となる。
  動脈硬化には、細動脈硬化と粥状動脈硬化があり、前者は脳出血や腎硬化症、後者は心筋梗塞や太い血管に起こる脳梗塞に関係が深い。近年、本邦では、脂質異常症の有所見率が高くなっており、後者の動脈硬化に起因する疾患が増えている。
  細動脈硬化の重症度を把握するために、以前から眼底網膜の血管変化の評価が行われてきた。血管を直接視診する方法であり、近年でもその有用性は揺るがない。眼底に何らかの異常を認める例では、そうでない例に比し、2-3倍の脳卒中発症危険率を有している。
  粥状動脈硬化の重症度を把握するために、現在、最も頻用されているのが、頸動脈エコー法である。血管内をエコーで視診することが可能で、動脈硬化進展の場である血管内膜・中膜の厚みをIMT(内膜中膜厚)として0.1mm単位で計測することができる。疫学研究の結果でも、低IMTの例に比し、高IMT例では、心筋梗塞や脳梗塞発症率が数倍となっている。
  これらの方法に加え、尿中微量アルブミン測定による腎障害の早期把握や脳MRIによる無症候性脳梗塞の検出なども動脈硬化の重症度を早期から把握するために役に立つ。近年は、新規で有用な薬剤が多数開発され、各種危険因子を適切にコントロールすることが可能になってきた。個人の動脈硬化の重症度を評価し、その重症度に応じた適切な治療を行うことが、動脈硬化の進展を抑制し、引いては重篤な血管障害を予防する上で極めて重要であることを強調したい。