市民健康講座

第365回市民健康講座(2025年11月28日)

テーマ心筋症という病気を知っていますか?
講 師大阪大学医学部附属病院 循環器内科 
厚生労働科学研究 難治性疾患政策研究事業
特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究班
大谷 朋仁先生
開催日時令和 7 年11月28日(金)午後2:00~3:30

 心筋症は心臓の筋肉に異常が生じる病気で、心臓を家に例えると「壁」の疾患にあたります。冠動脈疾患、弁膜症、不整脈などと並び、心不全の主要な原因です。形態からは、肥大するタイプ、拡張するタイプ、硬くなるタイプなどに分類され、原因が明らかでないものは特発性と呼ばれますが、近年、遺伝子の変化(変異)が関与することが一部で明らかとなり原発性心筋症とも呼ばれています。一方、全身の病気など特定の原因によるものは二次性心筋症とされます。
 二次性心筋症の代表的なものには、心アミロイドーシスがあります。異常タンパクであるアミロイドが心筋に沈着し心臓が硬くなることで心不全を引き起こします。トランスサイレチン型(ATTR)が多く、高齢男性で手根管症候群を合併する場合は注意が必要です。診断には骨シンチや心筋生検、
遺伝学的検査が用いられ、薬剤によりアミロイドの沈着進行を抑える治療が可能になっています。
 肥大型心筋症は心筋が肥大する原発性心筋症で、500人に1人と比較的多く、40〜60%で心筋の
遺伝子変異が関与します。息切れ、胸痛、動悸、失神がみられ、突然死のリスクがあります。治療にはβ遮断薬やミオシン阻害薬、カテーテルや外科的な心筋切除、植込み型除細動器などがあります。評価が望ましい家族がおられる場合などは、診断時に保険診療でできる遺伝学的検査が推奨されています。遺伝学的検査は生涯変わらない情報であるため、結果の受け止め方や家族への影響を踏まえ、遺伝カウンセリングとともに行われます。カウンセリングでは科学的情報に加え心理・社会的側面にも配慮した支援が提供されます。
 拡張型心筋症は心臓が拡張する病気で、発症率は年間10万人あたり5~8人とされます。原因は
遺伝子変異のほか、ウイルス感染や免疫異常も関与するとされています。主な症状は心不全によるもので、特異的な治療はまだ確立されておらず、心不全に対する薬が中心です。薬の治療により約4割で心機能の改善が認められますが、治療中断で約半数は再度、悪化します。治療を継続していても
再び悪くなる場合もあり、治療継続が重要です。また、心不全にならないように塩分などの生活習慣に注意することなども重要です。心筋症がすすみ、重症心不全に至った場合には補助人工心臓治療や心臓移植(原則65歳まで)が選択肢となりえます。肥大型心筋症や拡張型心筋症では、遺伝子治療や再生医療の研究も進んでいます。

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