テーマ | そのしんどさは年齢のせいですか?:心臓弁膜症のきづく・はかる・なおす |
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講 師 | 大阪公立大学 心臓血管外科 教授 柴田 利彦 先生 |
開催日時 | 2023年(R5年)3月13日 |
<きづく> しんどくなると自然と行動制限を行い、「しんどさ」を気付かないようにします。自分のしんどさに気付くためには、なんらかの尺度を持つ必要があります。例えば、「この坂道は以前なら問題なく上れたのに、最近休憩する」とかです。「高齢だから、、」との思い込んでいると、実は心臓弁膜症による心不全が潜んでいます。心臓弁膜症は治せる病気です。知らぬうちに病状が進行しますのでよいタイミングで手術をうけるべきです。
<はかる> 弁膜症では心エコーで重症度を判定します。手術をすべきかどうかは、内科・外科や多種職合同でのハートカンファレンスに諮ります。また、年齢・併存症・活動力などの要因を総合的に判断し、どのような治療が有効で安全であるかも検討します。
治療の危険性について、「この治療の死亡率が2%」と説明しても患者さんには「98%」大丈夫という楽観的な言葉として捉えられることもあります。そこで、2%=1/50という分数に直して、「2%とは50回に1回墜落する飛行機」と例えを出して、その尺度(危険性)を共有します。
<なおす> 僧帽弁閉鎖不全症(逆流)が増えていますが、多くの場合は弁を支える紐状組織(腱索)が悪くなり、支えきれなくなった弁の隙間から血液の逆流が生じます。これに治療は、自分の弁で修復する弁形成術が第1選択術式となっています。最近では胸を大きく切らずに、右胸の数センチの創部から心臓に到達する方法で手術ができるようになりました(MICS)。この方法は胸骨を切らないため、患者さんの手術による負担が少なく早期の回復が得られる点がメリットですが、外科医としては熟達した技量が必要となります。2018年からロボットを用いた心臓弁膜症(弁形成術のみ)が保険診療として認められ、当院でもすでに150例行いました。最近では複雑な弁形成手術もロボットで施行可能です。このような低侵襲心臓手術は以前には早期社会復帰を必要とする若い人を対象にされてきましたが、最近では「高齢者にこそ低侵襲心臓手術をすべき」であると思っています。
<みまもる> かかりつけ医を持ち、ずっと「見守る」こと、そして血圧自己管理・服薬自己管理で自分の「身を守る」ことも大切です。