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市民健康講座

第338回市民健康講座 (2020年1月24日)

テーマSTOP CKD?腎臓守って健康長寿
講 師大阪大学キャンパスライフ健康支援センター センター長・教授
大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科 守山 敏樹 先生
開催日時2020年(R2年)1月24日

 心臓、腎臓は体内では離れた場所に存在しますが、実は助け合いの関係にあり、どちらが弱っても相手方によくない影響が出ることが知られています。本講演で、私は腎臓の専門家として、慢性腎臓病(CKD)があると心臓病が増える、そして、腎臓を守ると心臓病のみならず他の疾患についても良い影響がもたらされ、「健康長寿」につながるということをご紹介いたしました。
 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)という考え方は、これまでの狭い捉え方の腎臓病の枠を超えて、

  1. 蛋白尿の存在
  2. 腎機能低下GFR<60ml/min/1.73m2)

のいずれか一方または両者が3ヶ月以上持続することをもって定義・診断される比較的シンプルな病態の理解です。日本腎臓学会の調査によれば、我が国の成人の8人に1人となるおよそ1300万人がCKDの診断基準に当てはまります。そして、CKDを有する頻度は年齢と共に上昇することもわかっています。その原因としては高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症、喫煙、高尿酸血症といった生活習慣病が中心になっていると考えられています。これらの因子は心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患の危険因子としても重要ですし、またCKD という病態はそれ自身が心血管疾患の強力な危険因子であることが知られています。
 このことからCKDの発症、進展、重症化予防を目指すことは、末期腎不全発症予防のみならず、心血管疾患予防にも直結し、とりもなおさず、健康寿命延伸につながることが期待されます。本講演では、CKDとは何か、をご紹介し、CKDと言われたらどのように対処していくか、について、多くのCKDの方々が当てはまる軽度のCKDにおける注意点を主に生活習慣との関連についてお話しいたしました。CKDそのものに対する特効薬は現在存在しません。そこで、CKD対策は、併存する高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などに対して、それぞれ丁寧に改善を図ることが治療の中心となっています。薬物療法が必要となれば、適切に実施していくことはとても重要で、是非かかりつけの先生とよく相談され、お薬が必要となったら「薬が増えていやだな」と考えないで服用していただくことをお勧めします。しかし、薬物療法を行えばそれで足りるというわけではありません。実はご自身で実行可能である生活習慣の改善はとても重要となってきます。今回ご紹介しました「5つの健康習慣」を 実践することは、心血管疾患のみならず、認知症、悪性腫瘍、がん、感染症など幅広い疾患の発症進展リスクを低下させることが知られています。是非取り組んでいただきたいと思います。 

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