テーマ | 動悸と不整脈のお話 |
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講 師 | 大阪大学大学院 国際循環器学寄附講座 寄附講座講師 水野 裕八 先生 |
開催日時 | 2019年(R1年)7月22日 |
テーマ①心臓のお話
心臓は肺や全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。1回に送り出す血液は70ml 程度、脈拍は1分間に60-100回程度で動いています。これを1日あたりに換算すると、約10万回拍動してのべ7200リットルの血液を送りしていることになります。心臓の部品は家を構成する部品とよく似ています。壁は心筋、酸素や栄養を受ける水回りは冠動脈が該当します。部屋を区切るドアや窓の役割は弁が担います。最後に、刺激伝導系と呼ばれる内線電話によって心臓の各部屋が同期して動くようになっています。今回は、この刺激伝導系のお話が中心です。
テーマ② 心電図と不整脈のお話
心臓には右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれる4つの部屋があります。各部屋がバラバラに動くと効率の良い仕事ができませんので、心臓には刺激伝導系と呼ばれる内線電話のようなシステムが備わっています。右心房の上のほうに洞結節と呼ばれる場所があり、全身の状態(寝ている/起きている/運動しているなど)から最も適切な数の電気信号を作り出し、心房→心室へと伝えることによって心臓の筋肉を収縮させます。この電気信号を外から記録したものが心電図です。正常なリズムのことを洞調律と呼び、各波形が規則正しく揃っています。逆に、不整脈とは洞調律以外のリズムであり、頻脈/徐脈、単発性/持続性などに分類されます。不整脈の症状は無症状・脈が飛ぶ・動悸・息切れなどさまざまですが、もっとも危険な症状は脳に血液が行かなくなることによる失神です。そのまま 放置すると突然死に至るため一刻も早く治療しなければなりません。その他にも必要に応じてペースメーカーやカテーテル手術、お薬などを組み合わせて治療が行われます。
テーマ③ 心房細動のお話
心房細動とは、たくさんある不整脈のなかで最も頻度の高いものです。70歳以上になると頻度が急増し、血圧・弁膜症・虚血性疾患などがあるとさらに頻度が増えます。動悸・息切れなどの症状だけでなく、脳梗塞のリスクを約5倍増やすことが分かっており、危険因子(心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病・脳卒中の既往)を持つ方には抗凝固療法(血液をさらさらにする薬)による脳卒中予防が推奨されます。また、近年カテーテルによる手術が広く行われるようになり、これまでの薬物治療に加えて選択肢が広がりました。もし心房細動と言われたら、①脳卒中の危険性を評価し、必要なら抗凝固療法を開始する、②これまでの生活習慣を見直し、進行予防に努める、③症状があって困るようなら心房細動そのものへの治療を検討する、ということが必要になってきます。何よりも心房細動に 気づくことが大切であり、日本不整脈心電学会と日本脳卒中学会が共同で3月9日を「脈の日」とするキャンペーンを開始しました。ぜひ御自身で脈を取っていただき、乱れていれば一度医療機関を 受診してみてください。