テーマ | なめんな!腎臓 ~知っておきたい慢性腎臓病の予防・治療~ |
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講 師 | 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合学寄附講座教授 椿原 美治 先生 |
開催日時 | 2014年(H26年)9月1日 |
癌や心筋梗塞、脳卒中を発症すると大騒ぎですが、蛋白尿や軽度の腎機能障害に代表される慢性腎臓病(CKD)は軽視されてきました。
しかし、CKDの概念が普及するにつけ、CKD患者がわが国でも約1,300万人存在すると推測され、単に透析療法導入のリスクであるだけでなく、心・血管合併症(CVD)の大きなリスクであることが、わが国でも証明されています。
CKDの原疾患を透析導入患者から見ると、1970年代には大半が慢性糸球体腎炎であったのが、
治療法の進歩により最近では20%未満に減少しています。代わりに糖尿病腎症が40%以上、高血圧性腎硬化症が約13%と増加しており、透析療法がまさに生活習慣病の終末期となっています。この様な事実からも、糖尿病や高血圧対策がCKD予防・治療対策に繋がるのです。透析医療費は年々増加し1兆5千億円以上にも達しています。糖尿病透析予防指導管理料が新設されたのも、この様な背景からです。
CKDとCVDの関連に関しても研究が進み、高血圧、糖尿病、腎性貧血、血管石灰化(CKD-MBD)、
脂質異常症、uremic toxinなど様々な機序が関与している事が判明しています。これに伴って、
予防・治療を目的とした食事療法や治療薬の開発も進んでいます。しかし、高血圧や糖尿病に関しては認識が進んでいる反面、腎性貧血やCKD-MBD、その他の対策には理解が得られていないのが
現状です。
今や早期に発見し、適切に治療すれば、CKDの進行(ひいてはCVD予防)を阻止するのみならず、寛解も期待できる時代となっており、 早期発見、専門医への紹介が重要な カギとなります。
しかし腎専門医の不足も大きな問 題です。このため、病診連携が必須の 課題です。
日本腎臓学会が示す紹介基準(図) を参考にして頂き、透析導入患者の 減少、CVD発症の予防に繋げていきた いと祈念しています。