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市民健康講座

第305市民健康講座 (H26年7月14日)

テーマ患者に優しい弁膜症手術
講 師国立循環器病研究センター 副院長 小林 順二郎 先生
開催日時2014年(H26年)7月14日

 心臓外科手術の成績は向上し、手術死亡率は2%を切るようになっています。最近では、抗凝固療法を回避するための生体弁使用頻度が増加し、低侵襲心臓外科手術として人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術や僧帽弁閉鎖不全に対する小切開僧帽弁形成術が一般化し、さらには本邦でも大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)が保険適応となっています。
 小切開僧帽弁形成術は、右の乳頭下に約7cm皮膚切開をおいて手術を行うものです。足の付け根から、大腿動静脈にカニューラという管を入れて人工心肺を確立し、特殊な手術器機を用いて僧帽弁逆流を修復します。最近ではdaVinci手術支援ロボットを使用してもっと小さな傷から手術できるようになってきました。
 また大動脈弁狭窄症に対するTAVIは2013年10月から保険適応となった手術方法です。75歳以上の高齢者では、その5%近くがこの病気を持っています。80歳以上の高齢者では、通常の人工心肺を使用した弁置換術では手術後の回復が遅く、いろいろな合併症を併発して亡くなる危険性が高くなります。そこで、まず足の付け根の大腿動脈から大動脈を伝って8mmに圧縮した生体弁をカテーテルという管につけて挿入します。大動脈弁の内側に届いたところで、風船により元の生体弁の大きさに膨らませて、外周を取り巻く金網状の金属により固定します。問題点は挿入した生体弁との間にすき間ができて弁の周囲で血液の逆流が起きたり、血栓による脳梗塞などを起こすことや、
長期の耐久性がわかっていないことなどです。

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