テーマ | がん診療における腫瘍循環器外来の意義 -「がんと循環器」疾患の診療とは- |
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講 師 | 独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 循環器内科・精密健康診断科 主任部長 向井 幹夫 先生 |
開催日時 | 2013年(H25年)11月11日 |
生活習慣の欧米化とともに急激に高齢化が進む我が国において、生活習慣病ならびに循環器疾患を合併するがん患者が多く認められています。がん治療の進歩によりがん患者の生存期間が延長する一方で、分子標的薬の出現などによって従来は認めることのなかった心血管系副作用(心毒性)を示す症例が増加しています。日々進歩するがん臨床の現場では、がんと循環器疾患の両者を同時に診療する必要性に迫られています。
大阪府立成人病センターでは我が国で初めて腫瘍循環器(Oncocardiology)外来を創設し、がんと循環器疾患を合併した患者を対象に化学療法や放射線療法により心毒性が認められた患者を中心に診療を行っています。腫瘍循環器外来にとって最も重要なことは各科との連携です。心毒性は、発症時期が不定であり急性に経過し治療に難渋する症例が多いため、いかに早期に診断し治療を開始するかが重要となります。腫瘍専門医、放射線治療医、そして外来化学療法室、薬剤師など多く医療スタッフが協力し心毒性に対応することで抗がん剤や放射線治療を安全に適切に行うことが可能となると考えています。
また、抗がん剤の適正使用は現在問題となっている医療経済の面でも有用と考えています。がん治療における合併症に対して適切に対応することで、単に治療を中断するのではなく、従来であれば治療を行う事が出来なかった症例に対してより効果的な治療を行うことも可能となります。
参考文献
・向井幹夫. がん診療における腫瘍循環器外来の役割. 日本医事新報 Japan Medical Journal 2013, 4631: 48-49.
・向井幹夫. オンコロジック・エマージェンシー 心毒性:心不全・虚血性心疾患・不整脈 成人病と生活習慣病 2013, 43: 450-454.