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市民健康講座

第300回市民健康講座 (H25年9月20日)

テーマ動脈硬化を防ぎ、血管をいつまでも若く元気に保つために
講 師京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター 早期臨床試験部 教授 横出 正之 先生
開催日時2013年(H25年)9月20日

 わが国の平均寿命は女性で86.4歳を超え、男性も80歳に届こうとしている。全人口に対する65歳以上の高齢者の割合である高齢化率は2007年に21%を超え、世界でも類を見ない超高齢社会に突入したが、これから求められるのは単なる寿命の伸びだけではなく、老いても自立した尊厳ある生活をどれだけ長く送れるか、すなわち「健康長寿」の達成にある。わが国の死因をみると加齢に伴い、がんに対して心疾患、脳血管障害の占める比率が上昇する。これらはいずれも動脈硬化性疾患であり、高齢者の日常生活動作(ADL)を低下させることから、まさしく健康長寿を目指す上で、重大な制圧目標である。
  近年の基礎研究、大規模疫学研究、ならびに臨床試験から動脈硬化性疾患に血清LDLコレステロール(LDL-C)が深く関わることは確立したといえる。またわが国の疫学研究であるNIPPONDATA80でも、加齢自体が動脈硬化性疾患のリスクであること動脈硬化性疾患の絶対リスクは非高齢者より大きいことが明らかになっている。2012年に改訂された日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、絶対リスクとして患者が今後10年間に冠動脈疾患で死亡すると推測される確率から管理目標値を設定した。また最近の研究により65歳~74歳の前期高齢者では高LDL-C血症は動脈硬化性疾患の危険因子であり、LDL-C下降による効果が期待できるとした一方、今後増加する後期高齢者に対する管理については残された課題であるとしている。
  一般的に脂質異常症を有する高齢者において、生活習慣是正は患者の運動能の低下や食事管理が容易ではないことから奏効しにくい。加えて薬剤治療に際しても高齢者は若年者に比べ腎・肝機能異常を併存することが多く、さらに多数の薬剤を投与されているなどの特徴を有しており、若年者とは異なる視点からの対応が必要である。
  講演では以上の見地から、動脈硬化疾患の予防ならびに健康寿命を延ばすための方策や展望について述べ、すこやかな毎日を送るために役立てていただきたいと考えている。

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