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市民健康講座

第341回市民健康講座 (2021年11月1日)

テーマ心不全患者さんの栄養について
講 師大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科 助教
 坂本 陽子 先生
開催日時2021年(R3年)11月1日

 心不全(体のむくみや息切れ)という病気になると、全身への血液の巡りが悪くなることで、食事を栄養として吸収し自分の身体を造る、という部分にも影響が出てくることがあります。そうなってやせてしまうと、かえって悪い(寿命が縮まる)ことも知られるようになってきました。 心不全になる原因にも色々ありますが、高血圧や肥満、糖尿病などは心不全になるリスクの高い状態と言われています。このような、「心不全の症状はないが心不全のリスクがある状態」と、「実際に心不全になってしまった状態」では栄養療法についても分けて考える必要があると言われています。 心不全ステージ分類と言って、心不全のリスクのある状態をA/B、実際に心不全になった状態をC/Dと分類しています。Aは高血圧や肥満など心不全のリスクのある状態、Bは心筋梗塞や心肥大、弁膜症など心臓の異常はあるが心不全の症状はない状態です。心不全の症状が出てくるとC、心不全のコントロールが難しくなり何回も入退院を繰り返すような難治性の心不全ではDとなります。 A/Bという段階では、高血圧や高脂血症、肥満、糖尿病を改善する食生活・運動習慣が大事です。特に日本人は塩分摂取が多い食生活をしており、過度の塩分摂取は高血圧、ひいては心不全につながります。減塩の目標は心不全のリスクを減らすためには1日に6グラムと言われています(日本人の平均塩分摂取量は男性で11g、女性で9gと多いです)。まずはご自身が摂取している塩分がどれくらいか、塩分チェックシートなども活用して把握してみましょう。また日本人は調味料からの塩分摂取が多いので、調味料を変更する、だしを利かせるなどの工夫をしてみましょう。色々な研究結果からは地中海食やアメリカのDASH食のような食事パターンは心不全や脳梗塞などの心血管リスクを減らすことがわかっています。和食でも、減塩に注意する、甘みの少ない果物・乳製品や未精製穀類・ 雑穀を摂取する、などの工夫を行うことでこのような効果が得られると考えられています。 C/Dという段階に入り、実際に心不全の症状が出てきた場合には、むくみのために腸からの栄養の吸収が悪くなったり食欲が落ちたりすることがよく見られます。これらにより容易にやせやすくなります。心不全の治療でこれらの症状は良くなることが多いですが、特に低体重(やせ)の方では体重減少しないようにしっかりカロリーやタンパクを取っていく必要があります。どれくらいのカロリーやタンパクを取るべきかについてまだこれといった指針はありません。しかし当院で心不全患者さんの基礎代謝を測ると低体重の方ほど体重当たりの基礎代謝が高く、思ったよりも必要カロリーが高いことがわかりました。リハビリテーションによる無理のかからない運動も併用しながら、しっかり カロリー・タンパクを取っていくことが大切です。

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