テーマ | 歩くと胸が痛い、歩くと足が痛い、息切れがする、胸がドキドキする ~それは循環器疾患かもしれません~ |
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講 師 | 八尾市立病院 院長 星田 四朗 先生 |
開催日時 | 2017年(H29年)7月14日 |
今回の市民健康講座では、心房細動を中心とした不整脈、心筋梗塞症・狭心症や閉塞性動脈硬化症を中心とした動脈硬化性疾患について、症状や治療の実際について概説した。
心房細動の治療には、リズムコントロール・レートコントロール・除細動治療・抗凝固療法がある。洞機能の回復は非常に重要であり、抗不整脈薬が従来投薬されていたが現在では経皮的カテーテル心筋焼灼術(ablation治療)により洞調律維持の成功率が高く脳梗塞の予防にもつながると考えられている。ablation治療方法も最近は進歩し、従来の生理食塩水でカテーテルの先端を冷却しながら治療を行うイリゲーションカテーテル以外に冷凍(クライオ)バルーンあるいはホットバルーンが登場し、治療時間の短縮に役立っている。除細動治療が困難な時にはベータ遮断薬による心拍数の適正化が望ましい。CHADS2スコアを算出することで、脳梗塞予防のための抗凝固薬を適正に内服する必要があることはいうまでもない。
心筋梗塞・狭心症の治療は経皮的冠動脈形成術(PCI)と抗血小板薬の進歩で全国津々浦々標準治療となっており、血管内超音波検査や光干渉断層法 と薬剤溶出ステントの組み合わせにより再狭窄率が激減している。最近では上腕足首血圧比(ABI)の計測が普及しており、間欠性跛行が特徴である下肢閉塞性動脈硬化症の症例が増加している。特に、糖尿病症例や血液透析症例では冠動脈疾患だけでなく末梢動脈疾患も併発している症例が多く注意が必要である。このような動脈硬化疾患は共通の危険因子を有しており、この一番手は高血圧症である。家庭血圧と診察室血圧の基準は異なるが、併発疾患(腎臓病、糖尿病など)の存在によっても望ましい血圧値は異なる。EBMにより血圧基準を決めてきたので時代とともに基準の変遷があるが、 高血圧にとって変わらない重要な点は食塩摂取量に対する注意である。日本人は食塩摂取量が多い人種であるが、最近徐々に減少傾向はみられている。それでも食塩10g/day以上の症例が非常に多く、随時尿の検査でおよその食塩摂取量が推察できるのでそれを参考に意識することが第一歩となる。
年6回開催している市民健康講座を継続して参加していただき、更なる健康の推進に留意しましょう。