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市民健康講座

第293回市民健康講座 (H24年7月6日)

テーマ高血圧 ~くすりと自分がすべきこと~
講 師大阪大学医学部付附属院 老年・高血圧内科 病院教授 大石 充 先生
開催日時2012年(H24年)7月6日

 高血圧はサイレントキラーと呼ばれており、あまり大きな症状がない状態を経て脳卒中や心筋梗塞を引き起こす非常に怖い病気です。血圧は心臓から出てくる血液量と末梢の血管抵抗との比率で決められており、短時間の血圧変動は頸動脈にある圧受容体反射や二酸化炭素に対する化学受容体反射で制御されていますが、所謂高血圧治療のターゲットである長時間の血圧上昇はアルドステロンと腎臓における体液調節で規定されています。体液調節は塩分調節と考えてもよく、体内の塩分濃度を一定に保つために過剰な塩分は血圧を上げて体外に排出しようとする仕組みが確立しており、塩分制限が高血圧治療の最も重要な構成要素の一つである所以でもあります。
 塩分制限を中心とした生活習慣病は医師がするものではなく、患者さん本人にしていただくことです。減塩は食べ物の味を変えることにつながるので非常に実行しにくい生活習慣の修正ですが、調味料は計量スプーンを使用して測る、下味をつけない、しょうゆやソースはかけずにつけて食べる、味にメリハリをつける(1点に重点的に)、新鮮な材料と焦げ目とで料理を作る、だしの旨み・酸味・香辛料・香味野菜を利用する、隠れた塩分(干しうどんや練り製品)や漬物・佃煮は控えめ、 “減塩”“うすくち”という言葉にだまされないといった具体的な手立てを講じながら1日6g以下を目指すといいとされています。また、肥満も大敵です。18歳時の体重から何キロ増えたかが高血圧発症のリスクになることが報告されています。患者さんは「水を飲んでも太るの」とよく仰いますが、科学的にそのようなことはなく、果物や間食に含まれるカロリーは想像以上に多く、桃(120kcal)や大福餅(336kcal)に比べて早足歩行で消費されるカロリーの少なさ(140kcal/30分)を考えるとカロリー摂取を減らすことが最も重要です。
 血圧測定をすることは自分の体調管理にきわめて重要ですが、手首で測定する血圧計は解剖学的に血圧を正確に測定することは困難なので、正確な血圧を知るためには上腕にカフを巻き付ける血圧計を使用した方がいいでしょう。ただし血圧測定はテストではないので、満足する値が出るまで測定するのではなく、自分で測定回数を決めて血圧手帳に書き込むように習慣づけましょう。
 高血圧のような生活習慣病は生活習慣の改善が最も重要ですが、それでも血圧が高い場合には躊躇なく降圧薬を服用することをお勧めします。よくある質問に、「一度飲み始めたら一生飲まないといけないでしょ?」というものがありますが、私はいつも「完璧に生活習慣を改善して、減量して、ストレスをなくして規則正しい生活を一生続けられればお薬を止めることが出来ます。」と答えるようにしています。そんな聖人君子は存在しませんよね。
 生活習慣病は自分がすることが非常に大きなファクターをしめる病気ですが、それ故に自分で頑張ると見返りが大きな病気でもあります。高血圧の理論を理解して自分で出来ることから頑張っていきましょう。

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