テーマ | 循環器疾患によくみられる自覚症状 ~胸痛・動悸・呼吸困難~ |
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講 師 | 特定医療法人 渡辺医学会桜橋渡辺病院 副院長 藤井 謙司 先生 |
開催日時 | 2019年(H30年)1月23日 |
循環器疾患の三大症状である胸痛、動悸、呼吸困難について、そのメカニズムと意味、循環器疾患以外にも疑われる病態、自覚したらどうすべきかなどについて解説する。
【胸痛】「胸痛」とは胸が痛いだけでなく、圧迫される、締め付けられるなど、胸部のいろいろな不快感を含んでいる。胸痛をきたす循環器疾患としては、狭心症、急性心筋梗塞、急性動脈解離があるが、それ以外にも、呼吸器疾患や、消化器疾患、胸壁疾患がある。循環器疾患以外は生命にかかわることは稀である。 狭心症には2種類あり、心臓を養っている冠動脈が動脈硬化で狭くなる労作性狭心症と、冠動脈が痙攣して縮む「攣縮」が生じて心臓に必要な血液が十分流れない異型狭心症がある。前者は、運動や興奮など心臓に負荷がかかった時に胸が痛むのに対し、後者は安静時、特に睡眠中に胸が痛む。いずれも数分から15分程度で胸痛は治る。急性心筋梗塞はいつ起きるとは限らず、1時間以上数時間持続する。しばしば冷や汗や吐き気、息切れ、恐怖感を合併する。急性大動脈解離も激烈な胸痛であるが、しばしば背部に痛みが移動する。 痛みが数秒でおさまるものや、何日も胸痛が持続することはないし、何時間も続く痛みが短期間に何度も起こることはない。深呼吸したり体をひねった時に痛みがつよくなったり、痛いところを押さえると痛みが変化する場合は、内臓の疾患ではなく、胸壁の疼痛である。 労作性狭心症には運動負荷心電図検査が行われ、最終的には最近では造影剤を点滴しながら行う冠動脈CT造影で確定できる。急性心筋梗塞や急性大動脈解離は緊急入院の上、カテーテルで造影検査を行い、緊急治療が必要である。
【呼吸困難】「呼吸困難」とは、自分が満足できる呼吸をするために不快な努力が必要であったり、 それだけ努力をしても呼吸が不十分であると自覚することである。本来呼吸器疾患の代表的な症状であるが、心不全になると、肺に血液がうっ滞するために呼吸がしにくくなる。夜眠りについた後、 2、3時間して息が苦しくなって目が覚める発作性夜間呼吸困難は心不全に特異的な症状なので、自覚したらなるべく早く専門機関を受診すべきである。
【動悸】「動悸」とは、通常意識しない心拍動を意識することで、循環器疾患の症状としては最も多い。動悸には、脈が強いか速いか乱れているということである。強脈感は血圧が高くなっていることで、速脈感の中には発作的に脈が速くなる不整脈でも生じることがあるし、服用している薬の副作用の場合もある。欠脈感は不整脈の場合が多いが、もっとも頻度の高い期外収縮の場合は、不整脈の心拍はから打ちになるので感じないが、不整脈が治った次の正常心拍では2拍分の血液が拍出されて大脈となるので動悸として感じる。つまり、ドキッと感じた時にはもう治った時ということになる。
【まとめ】いずれの症状も、気になる場合は循環器専門医に受診して、ちゃんとした判断を受ける べきである。