テーマ | その足のむくみ、息切れは静脈が原因かもしれません ~意外と身近な静脈血栓塞栓症~ |
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講 師 | 国立循環器病研究センター 肺循環科 医長 大郷 剛 先生 |
開催日時 | 2018年(H30年)7月11日 |
血栓症は血管の中で血液が固まってつまってしまう循環器の病気であり、危険で大変重要ですが、通常は心筋梗塞や脳梗塞など動脈での血栓症がよく知られていると思います。しかしけして忘れてはならないのが静脈に起こる静脈血栓症です。静脈血栓症は長時間の飛行機旅行や震災後の車中泊などで今まで健康だった方にも突然病気が起こることがあり最近大きな問題となってきています。この静脈血栓症は足のむくみや、息切れ、だるさ等のありふれた症状の原因になりますが一般的にまだあまり知られておらず、専門家も少ないため診断されずに困っている患者さんが多くおられます。静脈血栓症は主に肺動脈と下肢静脈に発生するものが中心で、肺に血栓がつまると死亡する場合もあり危険な疾患であり、早期診断、治療が極めて重要です。 また下肢におきる血栓は足のむくみなどの症状を起こすだけでなく、肺血栓症を引き起こす塞栓のもとになるため早くみつけて治療する事が極めて重要です。肺血栓塞栓症の多くは足の深部静脈血栓症が浮遊して肺につまる発症しており、両者はひとつの連続した病態であるとの考え方から併せて近年は静脈血栓塞栓症と呼ばれています。通常は治療としてワルファリンという血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)での治療が行われてきたが、近年新しい抗凝固薬が登場し、その効果や副作用の少なさが示されつつあり、それに伴い静脈疾患の治療も変化してきています。しかし、基本となるのは予防です。血液の流れが悪くなることは静脈血栓ができやすくなるので、飛行機や長時間の移動、万が一の災害時での避難所や車内では長時間同じ 姿勢でいることは避け、数時間おきに時々歩く、脱水予防に適度に水分を取る、座ったまま でもできる足の運動をするなどの予防策をとることが重要です。