テーマ | 夫源病 ~熟年夫婦の距離の取り方~ |
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講 師 | 大阪大学人間科学研究科 未来共創センター 招へい教授 石蔵 文信 先生 |
開催日時 | 2017年(H29年)5月8日 |
6年前に男性には大変失礼な本“夫源病”を出版しました。夫(男性)を非難するためではありません。
会社や社会のストレスを抱えた男性が上手に発散することができないために家庭(妻や子供)にもストレスが及び、一番大切な家族の絆が崩壊しようとしています。とかく男性は自分を追い込む傾向があります。優秀で真面目な男性であればあるほどその傾向は強いようです。家庭でも夫婦の関係が微妙に変化し、お互いの存在がストレスを感じるようになると、後半の人生が虚しいものとなります。男性も女性も、仕事一筋または家庭一筋というよりも、仕事と家庭生活のバランスを日常からうまくとることが必要でしょう。
男性と女性は同じ人間ですが脳の機能やホルモンがかなり違います。似ているから互いに理解出ると思うのは大きな間違いです。全く別の生き物だと認識することから、お互いに理解をする方が良いと思います。
末永く夫婦仲良く暮らしたいというのは万人の願いでしょう。しかし、現実は夫が現役の時は”亭主元気で留守がよい“とのんびりしていた妻が、夫の定年とともに亭主在宅症候群で苦しむ話は稀ではありません。定年後の夫も、夢の定年生活が2~3年で破れて定年後うつで苦しむことも他人ごとではないくらい多いようです。こんなことでは折角頑張ってきた人生後半が台無しになります。なぜこんなことになるのでしょうか?夫も妻もお互いに依存しすぎてきたのではないでしょうか? 仕事中心の夫は稼いで来れば文句はあるまいと、家庭のことは一切お構いなしで、家事などを妻に依存してきたのではないでしょうか?一方、妻は家のことさえきちっとすれば文句はあるまいと、社会に出て収入を得る苦労を忘れて、金銭面では夫に依存してきたのではないでしょうか?お互いに、仕事や家事を完璧にこなすことで、互いの領分を譲ることも議論することもなしに30-40年過ごし、見た目は穏やかな家庭生活を築いてこられたのかもしれませんが、実際に心底お互いに理解し合うことを避けて来たのかもしれません。海外のデータでも喧嘩の多い夫婦の方が長生きするといわれています。子供の手も離れた中高年夫婦が再び信頼関係を取り戻すためには本音でぶつかり合うことも必要でしょう。お互いの存在の大切さを確認するために、私はプチ別居を勧めています。少し離れることで、お互いの良いところが見えてくるものです。そして、互いに頼らない生き方を探して見てはどうでしょうか?それは決して薄情なことではありません。
お互いに心地よい距離を測りながら、うまく助け合っていくことが中高年のパートナーシップをよりよいものするヒントかも知れません。