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市民健康講座

第291回市民健康講座 (H24年3月21日)

テーマ心房細動って恐い! -脳卒中にならないために-
講 師大阪府立急性期・総合医療センター 福並 正剛 先生
開催日時2012年(H24年)3月21日

 我が国も高齢化社会に突入し、年齢とともに増加するといわれている心房細動という不整脈は日常臨床で遭遇することが多くなってきています。昔は白髪のようなものとして放置されていた心房細動も心不全や脳梗塞さらに死亡の危険因子として重要視されるようになり、多くのガイドラインでその予防措置を講じることが薦められています。心房細動になると心房に血栓ができやすく、その血栓が流されていくとその先の血管を塞いでしまいかねません。そうなると脳の場合、寝たきり率6割という重度の脳塞栓(梗塞)になりうるからです。
  そのため心房細動と診断されれば、まず抗血栓療法を考慮しなければなりません。心不全、高血圧、高齢、糖尿病、塞栓症の既往などの因子があればなおさらです。その予防に使われるのがワルファリンという薬です。でもワルファリンは効果が過剰になると出血を来たし、不足すると血栓が出きて脳梗塞を引き起こしえます。また服薬中の食事内容や併用薬剤によりワルファリンの効果が影響されるため血液凝固能(PT-INR)を随時チェックしなくてはなりません。これがワルファリン使用率60%程度と低率になっている理由です。そのため、どのような患者に投与すべきか、どのような患者は出血しやすいかをスコア化して臨床的に利用されています。しかし最近、ワルファリンに代わる抗凝固薬として新しい経口抗凝固薬の開発がいくつか進んで、心房細動の塞栓予防効果やその副作用を調べる大規模臨床試験が次々と発表され、一年前にはダビガトランが、今年の4月からはリバーロキサバンが発売となりました。いずれも新薬であり注意深く使用すべき薬ですが、使い易く副作用の少ない有効な薬です。
  しかし、心房細動にならないようにするにはどうすればいいのかの一次予防、また一旦治っても心房細動を再発しないようにするにはどうすればいいかの二次予防も重要です。日常生活では、まず塩分を制限し過食やアルコールを控え、ストレスや過労を避けることです。それでも動悸やくらくら感が発作的に出現するようなことがあればすぐに専門医を受診すべきです。次に薬ですが、約4割の患者さんでは薬物療法にも限界があり、完璧ではありません。最近カテーテルを用いて心筋を部分的に焼灼する方法で心房細動を安全にかつ高い成功率でほぼ根治させることが可能になり、2-3日の入院は必要ですが、このような非薬物治療も有用な選択肢のひとつになっています。
  心房細動が起こっていても無症状の人も少なくありません。心房細動で取り返しのつかない事態(脳卒中や死亡)を避けるために抗血栓対策は不可欠です。定期的に健康診断や診察を受け、安全を確認することも大切です。

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