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市民健康講座

第352回-市民健康講座(2023年9月27日)

テーマ医療は “あなたの幸せ” に寄与できていますか?
講 師国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心理療法士
庵地 雄太 先生
開催日時令和 5 年9月27日(水)午後2:00~3:30

この度は、このような大変貴重な機会にお声かけいただき、主催運営に携わる関係各位と当日ご参加いただきました皆様に、心より感謝申し上げます。今回、「医療は”あなたの幸せ”に寄与できていますか?」というタイトルで、3つのテーマに分けてお話しをさせていただきました。

まず1つ目のテーマ「平均寿命と健康寿命の違い」では、健康的に活動できる生命の長さが重要であり、国も自治体も医療者もその延伸に取り組み始めていることをお伝えさせていただきました。特に、日本人の死因第2位である心血管疾患、第3位である脳卒中について、国は2018年に脳卒中・循環器病対策基本法を成立・施行させました。基本法の制定は、国を挙げて疾患への対策を講じるための根拠が整ったことを意味します。法律に則り、国や都道府県は各々に基本計画を策定し、その計画に沿って実効性のある対策を進めています。市民一人ひとりが病気についての正しい知識を身につけ、将来を見越して日頃から備えておくことは、国や各自治体が定める基本計画の大きな柱のひとつです。今回のような機会は、まさに基本計画の主旨に沿った事業と言えるでしょう。

次に2つ目のテーマ「上手な医療の活用法」では、循環器病の終着点である心不全を軸に、病気の悪化や再発を防ぎながら終着点に向かうスピードを可能な限り遅らせるための医療の有効な活用法や、図らずも心不全を発症し徐々に進展してしまった場合に備えた対策などについてお話しさせていただきました。医療機関ごとの特長に応じて賢く活用し、疾患だけでなく生活状況や個々の事情なども共有・相談できる心許せる“かかりつけ”の医療者を持つことをオススメさせていただきました。

そして3つ目のテーマ「自分らしい最期の迎え方」は、疾患の有無にかかわらず、いずれ訪れる最期の時に備えていただくことの大切さについてお話しさせていただきました。心臓病の治療やケアの選択肢は増え続けていますが、ご自身の価値観に沿った治療を選ぶのは容易なことではありません。その時の事情や病気の進展度などに応じて、ご自身が望む治療やケアを医療者と話し合いながら選んでゆくことが重要です。病気と上手に付き合いながら充実した人生を送り、最期はご自身の望むかたちで天寿を全うしていただきたいと、ご本人やご家族はもちろんのこと、私たち医療者も心から願っています。

本講演が一人でも多くの方の健康寿命の延伸に繋がることを心より祈念し、結語とさせていただきます。ありがとうございました。